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過敏性腸症候群(IBS)と向き合ってきた30年、自分を責める人生から、自分の味方になる人生へ

出かける前から、お腹が痛くなる。
電車や高速道路に乗るときも、会議に参加するときも、頭の中にあるのは、
「トイレはどこにあるだろう」
「途中でお腹が痛くなったら、どうしよう」
という不安。

今回お話を伺ったのは、「Inner Room(インナールーム)」のしおざきまゆみさんです。

しおざきさんは、中学生の頃から約30年にわたり、過敏性腸症候群(IBS)に悩んできました。

現在は、ご自身の経験を生かし、同じようにIBSや生きづらさを抱えている方、自分を責めてしまっている方へのカウンセリングを行っています。

トイレのことを考えながら過ごした30年

しおざきさんの場合、緊張すると腸が痙攣するように感じ、お腹が痛くなることが多かったそうです。

電車に乗る。
高速道路を走る。
会議に参加する。
人が集まる場所へ出かける。

日常のさまざまな場面が、お腹の痛みへの不安と結びついていました。

何度もトイレへ行き、その後も、
「もう大丈夫かな」
「また行きたくなったら、どうしよう」
と考え続ける。

花火大会やコンサートなども、できるだけ行かないようにしていたといいます。
長い間、IBSは治らないもの、自分はお腹を壊しやすい体質なのだと思い、一生付き合っていくものとして過ごしていました。

「気にしなければいい」と言われて

IBSの苦しさは、お腹の症状だけではありませんでした。

人に話しても、
「そんなに気にしなければいいじゃない」
「もっと精神的に強くなればいいんじゃない?」
と言われ、理解してもらえないことも多かったそうです。

言った方に悪気はなかったのかもしれない。

けれど、しおざきさんの中には、

そうしたいんだけど、できないんだよ。

という思いがありました。

次第に、人に話すことも、外出することも控えるようになり、「一人で抱えていくしかない」と感じていたといいます。

当時を振り返り、こう話してくださいました。

あの頃の自分を抱きしめてあげたい。
よく頑張ったねって言ってあげたいです。

長い間、誰にも十分に理解されない苦しさを抱えながら、それでも日々を生きてきたご自身へ向けた言葉でした。

一番自分を責めていたのは、自分自身だった

しおざきさんには、IBSだけでなく、以前から生きづらさもありました。

朝起きたときから、何となくしんどい。
何をしていても虚しさがある。
人生を楽しいと思えない。

「なぜ自分の人生は、こんなに苦しいのだろう」

その答えを探すように心理学を学び、自分の感情を見つめるようになりました。

そこでが気づいたのは、周囲の言葉に傷ついてきただけでなく、自分自身も、ずっと自分を責め続けていたということでした。

「失敗する私はだめ」
「人に認められなければいけない」
「周囲に配慮できない私はだめ」

さまざまな考えで自分を縛り、できない自分に、さらに否定の言葉を向けていたのです。

自分が生きているのに、自分を認めず、応援もせず、自分で自分を責めている。
それは、すごく悲しいことだと思いました。

その気づきから、「これからは自分を大切にしよう」と考えるようになりました。

「自分が悪いわけではなかった」と知る

心理学を学ぶなかで、しおざきさんは「アダルトチルドレン」という概念を知りました。

家族の間に緊張があり、否定的な言葉を受けることも多かった幼少期。
「どうせ無駄だよ」
「そんなことをしてもだめだよ」
そのような言葉を受けながら育つうちに、いつの間にか、周囲から向けられた否定の言葉を、自分も自身にも向けるようになっていたことに気づきました。

自分が悪いわけではなかったんだ。
そういう環境のなかで、生きづらさを抱えるようになっていたんだ。

そう理解できたことは、大きな救いになったそうです。

責めてしまう自分も、まず認める

自分を責めていることに気づいても、すぐに責めなくなれるわけではありません。
「自分を責めてはいけない」
「早く変わらなければ」
と考えれば、それもまた新たな自己否定になってしまいます。

しおざきさんが大切にしたのは、責めてしまう自分まで否定するのではなく、

そうせざるを得なかったんだよね。
今は、責めてしまうときもあるよね。

と、まず認めることでした。

自分の気持ちを書き出し、否定したくなったときにも「そういうときもあるよね」と書き加える。

最初は無理に書いていた言葉も、続けていくうちに、少しずつ自然に受け入れられるようになったといいます。
嫌だと思う自分も、できない自分も認める。

その積み重ねによって、他人を優先してきた生き方から、自分の気持ちや自分自身を大切にする生き方へと、少しずつ変わっていきました。

四季を楽しめるようになった

しおざきさんは、以前は冬が大嫌いだったと話します。
寒い季節にはほとんど外へ出ず、四季を楽しむ余裕もなかったそうです。

けれど今では、

冬は冬で、きれいだし、楽しいなと思えるようになりました。

と話してくださいました。

心の変化と重なるように、身体にも変化を感じたそうです。
以前は末端冷え性がひどく、35℃台だった平熱が36℃台になり、身体からエネルギーが出てくるように感じるようになったといいます。

また、収録時点では約2年間、以前のような腹痛や腸の痙攣をほとんど感じることがなくなり、電車や高速道路にも普通に乗れるようになったそうです。

しおざきさんは、IBSによって、行動できる範囲だけでなく、自分の考え方や人生の可能性まで狭めていたことに、改善してから改めて気づきました。

そして、今の思いをこう表現しています。

トイレのことを気にせず、普通に生きられる。
それだけで、本当に幸せだと思います。

当たり前に見える日常は、長い時間をかけて取り戻した大切なものでした。

「あなたが悪いわけではない」

しおざきさんが今、特に寄り添いたいと考えているのは、IBSに悩んでいる方だけではありません。

育ってきた環境や人間関係のなかで、自分を責めることが習慣になり、
「自分が悪い」
「自分はだめだ」
という負のループから抜け出せずにいる方にも、思いを届けたいと話します。

最後に、今も生きづらさを抱えている方へ、メッセージをいただきました。

あなた自身が悪いわけではない、ということを強く伝えたいです。
そして、いつからでも変わっていけます。

自分のことを、急に好きになれなくてもよい。
自分を責めてしまう日があってもよい。

そのような自分も含めて認めながら、少しずつ自分の味方になっていく。

しおざきさんは、ご自身が歩んできた経験を生かし、一人では自分の気持ちに気づくことが難しい方に、寄り添っていきたいと考えています。


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インタビュー動画

しおざきさんご自身の言葉と、誠実な語り口を、ぜひ動画でもご覧ください。


収録後記

塩崎さんが一つひとつ紡がれる言葉を受け取るたびに、
「どれほどの苦しさがあったのだろう……」
と、胸が苦しくなりました。

30年――。
その年月の重さは、私には計り知れません。

だからこそ、
「あの頃の自分を抱きしめてあげたい」
という言葉の重みを思うと、胸がいっぱいになりました。

過去のご自身に、そう言ってあげられるところまで歩んでこられた。
本当によかったと、私も胸をなで下ろすような思いでした。

誰かに理解してもらえないだけでなく、自分で自分を責め続けていた日々。
自分の心と丁寧に向き合い、責めてしまう自分も含めて認めながら、少しずつ自分の味方になってきた日々。

「自分の心と向き合えば、必ず癒やされる」
そんな単純なことを言いたいわけではありません。

それでも、誰と出会い、心をどこへ向けていくかによって、人生は大きく変わることがある。
塩崎さんは、ご自身の歩みを通して、そのことを教えてくださいました。

実は、私自身も以前、塩崎さんのカウンセリングを受けたことがあります。
そのとき、塩崎さんの言葉や表情に触れながら、心の深いところが静かに癒やされていくのを感じました。

今回お話を伺い、その温かさは、ただ優しい言葉をかけてくださるからではなく、ご自身が長い間苦しみ、一つひとつ自分の心を受け止めてきた経験から生まれているのだと思いました。

今、自分を責めることから抜け出せずにいる方へ、しおざきさんの、「あなたが悪いわけではない」「いつからでも変わっていける」という言葉がどうか届きますように!

塩崎さん、貴重なお話をありがとうございました。

取材・文:原 良恵


※この記事でご紹介している症状や体調の変化は、塩崎さんご本人の体験です。カウンセリングによる特定の効果をお約束するものではありません。体調に不安がある場合は、医療機関へご相談ください。

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