「らしさ」は、押し通すものじゃない──関係性の中の“自分らしさ”の本質を考える
「らしさを活かすリーダー術」と聞くと、
“自分らしく振る舞えばいいんですね!”と思われることがあります。
でも、ここで言う「らしさ」は、“自分の正しさを押し通すこと”ではありません。
むしろ、周囲との関係の中で
「自分はどんな在り方をすると自然で、周囲にとっても心地よいか」
を見つけていくプロセスです。
かつての私は、「自分は真面目で責任感がある」ことが“自分らしさ”だと思っていました。
だからこそ、部下にも同じように真面目でいてほしい、考えて動いてほしい、と求めてしまっていたのです。
でもそれは、“らしさ”ではなく、“自分の思う正しさ”を押し付けていたのかもしれません。
ある部下が「記憶が曖昧で…」と悩んでいたとき、
「普段から考えて行動していれば、自信をもって言えるでしょ」と伝えました。
今思えば、それは彼の個性をまったく見ていませんでした。
人には、記憶の仕方も、判断の癖も、思考のテンポも、それぞれ違う。
“らしさ”を育むとは、
「自分を知り、相手を知り、どう関われば自然に力を発揮し合えるかを探ること」
なのだと、ようやく気づいたのです。
■ “らしさ”は、自分本位ではなく、関係性の中で育つ
自分の“らしさ”が見えてくると、
無理をしないで関われる場面が増えます。
でもそれは、好き勝手していいということではありません。
相手が困っているのに、「これが私のスタイルだから」と押し通すのは“らしさ”ではなく“我”です。
“らしさ”とは、むしろ「相手との関係の中で、自分がどう関わればよいか」を見つけていくこと。
自分に合うやり方を知る。
相手に合う伝え方を探す。
その往復の中で、自分なりのリーダーシップが磨かれていくのだと思います。
■ 自己理解は、他者理解とつながっている
「自分はこういう人間なんだ」と気づくことは、
「じゃあ、他の人はどういうタイプなんだろう?」と視野を広げることでもあります。
だから自己理解は、内省にとどまらず、
“他者との違いを前提に関わる力”を育ててくれる。
「自分を知ること」は、「自分を押し通すこと」ではない。
それを誤解せずにいられたとき、リーダーとしての“らしさ”が、優しさや安心感として伝わっていくのだと思います。