フィードバックとフィードフォワードの実践
「1on1レクチャーシリーズ」第3回「フィードバック・フィードフォワード」です。
今回も部下へとの信頼を築いていただくことを目的に
・フィードバックに関すること
・フィードフォワードに関すること
・フィードバックとフィードフォワードのバランス
についてお伝えし、フィードバック・フィードフォワードの具体例をお話して参ります。
ちなみに、ハーバード・ビジネス・レビューの2019年3月の特集記事によると、フィードバックという建設的な批判はほとんど役に立たない!とされています。
フィードバックは欠点を指摘することで学習を妨げるので、マネージャーは弱点を気にせず強みを重視するように促すべきだと述べているんですね。
ただ、その翌々月には同じくハーバードビジネスレビューから、本人の成長のためには適切な指摘が必要だという論文があがりました。同年の調査では、回答者2700人のうち94%が、「訂正フィードバックを上手に伝えてもらえればパフォーマンスが向上するだろう」と答え、3分の2近くが、「もっとフィードバックをもらっていれば、自分のパフォーマンスとキャリアにおける成功の可能性が大いに高まっていただろう」回答していたそうです。
ということで、
フィードバックは、組織の成長や個人のパフォーマンス向上に欠かせない要素ですが、メリットとデメリットがあって、それをどのように行うかが重要ということがご理解いただけると思います!
そこで、フィードバックを受けた側が、心情的にも成長に繋げやすいフレームワーク「SBIアプローチ」と、フィードフォワードという未来思考のアプローチで部下の成長を支えるためのポイントを解説します。
フィードバックのメリットとデメリット
◇メリット「自己理解の向上による成長」
他者からのフィードバックは、外部の視点から自分を理解する助けとなるので、強みを伸ばし、弱みを克服するための行動強化と改善につながります。例えば、プレゼン練習の場で、「プレゼンテーションの構成良いですね。、もう少し具体例を交えるとさらに訴求力があがるように思います」というフィードバックは、プレゼンテーション本番への改善に繋がりますし、それによってプレゼンが成功した際の信頼関係も強化されていきます。
◇デメリット「受けてが防御的になる」
否定的なフィードバックをした場合、受け手が防御的な態度を取るリスクがあります。
特に批判的な内容のフィードバックは、受け手がそれを拒絶し、結果として学習や成長の機会を失う可能性が高くなってしまいます。
さらに、フィードバックは主観的なものですので、評価者の視点やバイアスが反映されやすく、必ずしも客観的ではないということも承知しておきたいところです。
また、弱点に焦点を当てたフィードバックは、受け手が自信を失い、成長の機会を逃すリスクが増します。加えて、強みを十分に活かさず、弱点ばかりを指摘するアプローチは、従業員が自身の強みを伸ばす機会を失わせることになり、全体的な成長を阻害する恐れがあります。
そこで、フィードバックを効果的に伝えるために、SBI(Situation-Behavior-Impact)アプローチを紹介します!
SBI(Situation-Behavior-Impact)アプローチ
SBIは具体的な状況(Situation)、行動(Behavior)、そしてその行動が与えた影響(Impact)を明確に伝える手法です。
例えば、外部を招いたミーティングで、若手社員が社内の状況を説明する際に、「何言っているか分かんないよ、俺が説明する」と話を遮った先輩へのフィードバックをSBIで行ってみます。
「本日のミーティングで、若手社員が社内状況を説明している途中に『何言っているか分かんないよ、俺が説明する」といって』話を遮って代わりに説明しましたね。
そのため、ずっと準備をしてきた若手社員の話を最後まで聞くことができませんでした。
このことで、彼(女)は、自信を失ってもう発表したくないと思っているかもしれないですね。
私は皆に成長の機会を与えたいですし、自信をもって仕事に臨んでもらいたいと思っているのですが、
そのためにはあなたのサポートも必要です。
私はあなたの熱量に魅力を感じていて、その熱量が皆の背中を押すことを期待しているのですがいかがですか?」のように伝えます。
このように具体的な行動とその影響を伝えることで、相手に対する評価がより明確になり、改善に向けた具体的な行動が取りやすくなるんですね。
SBIアプローチは、評価が感情的ではなく、事実に基づいたものであるため、相手が防御的になりにくく、より受け入れやすいという利点があります。
では、続いてフィードフォワードについてお伝えいたします。
フィードフォードは、過去の行動に対する評価だけでなく、未来に向けたアドバイスや期待を伝える手法です。
例えば、先ほどの例で部下の話を遮った主任に対して、
「私は皆に成長の機会を与えたいし自信をもって仕事に臨んでもらいたいと思っているのですが、そのためにはどのようにすると良いと思いますか?私はあなたの熱量に魅力を感じていて、その熱量が皆の背中を押すことを期待しているのですがいかがですか?」という言葉を使いましよね。これが未来に向けた期待やアドバイスになります。
部下は自分がどう成長できるかを具体的にイメージし、行動に移すことができます。過去ではなく未来に焦点を当てるため、前向きな行動につながってモチベーションを高めます。
ただ、 フィードフォワードが抽象的すぎると、従業員が具体的にどのように行動を改善すべきかが不明確になることがあるので、具体的な行動ベースにまで落とし込んでいただくこと、また、未来に焦点を当てすぎると、過去の失敗や学びを無視してしまうリスクがあるので過去の教訓を活かすことが、効果的な成長には不可欠です。
ここまで聞いていただくと、効果的な成長支援には、フィードバックとフィードフォワードのバランスが欠かせないと感じられた方も多いのではないかと思います。
フィードバックは、自己認識を深め、具体的な改善点を理解するためのステップ
フィードフォワードは、その学びをもとにして未来の行動を改善するための道しるべ
この2つを組み合わせて過去の失敗を乗り越え、未来に向けて自信を持って行動できるよう道筋を作っていってはいかがでしょうか。
では、最後に具体的なフィードバック・フィーどフォワードのケースをご紹介します。気付きを促すということも大切なポイントであるということをふまえながらご確認ください。
部下がプロジェクトの問題で混乱しているケースを紹介します。
部下 「〇〇さん、すみまぜん!現在のプロジェクトはうまくいっていると思っていたのですが、今回の問題を完全に見落としていました!正直、参ってます」 上司: 「報告ありがとうございます。完全に見落としていたということなので、定期的な確認ミーティングがあれば、早い段階で問題をキャッチして、解決策を考える時間も持てたかもしれませんね。今後、同じような状況になった場合に備えて、リソース管理の方法をもう少し細かく見直してみましょうか?」 部下: 「はい、見直したいです。具体的には、どのようにリソースを見直せば良いでしょうか?」 上司: 「そうですね~、自分で考えてみるとしたら、どの部分に注目しますか」 部下: 「うーん、たぶん各メンバーのタスクの進捗状況をもっと頻繁に確認する必要があるかもしれません。」 上司: 「そうですね、それは重要なポイントです。さらに、他にどんな方法が考えられますか?例えば、タスクの優先順位付けについてはどうでしょう?」 部下: 「確かに、タスクの優先順位を明確にすることも重要ですね。それによって、どのタスクにリソースを集中させる必要があるのかがはっきりすると思います。」 上司: 「そうですね。こうして、現場の課題を知っているあなたの考えに基づいて進めることで、改善が期待できると思います。必要な時には、いつでもサポートしますので、引き続き考えて進めてみましょう。」 |
このように、部下に考えてもらい、自分が解決していくという「自己解決のプロセス」に繋げていくことで、信じてもらっている、見てもらっている、という信頼関係を強化し、成長をサポートしていけるのではないでしょうか。
今回は、質の高いフィードバックとフィードフォワードを通じて、組織内の信頼関係を強化し、個々の成長を促進していく方法をお伝えいたしました。日々のコミュニケーションの中でも、部下が成長を実感できるフィードバックをご提供いただければと思います!
次回は「部下のモチベーションを引き出す方法」についてお話しいたします。
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